だいぶ普通になってきた。十一時に出て、往路二時間半、そして採用面接、復路二時間、歩いて帰宅したら、勉強した後の夜が来た。つまり、病気なく社会人として働いていたら毎晩味わえたであろう宵である。感慨深い。私は何を買い、何のために働き、何を成そうと考えてきたのか。そう、ただ単純なこの書斎で、一日の総決算を毎晩、一人机に向かってするためなのだ。なんと爽快で自由な時間かと。
面接はうまくいき、七月から採用が決定した。ただ、七、八月の生計が立たないので、帰宅後、アルバイトしようと、簡単な仕組みのサイトで求人応募した。怪しそうなものもなくはない感じだったが何とか大丈夫だろう。目標は、六月に十万円である。都合良く稼げるようなら、七月入社以降もぼちぼち働き、二十万円くらい稼げたらやめようと思う。ちなみに、家庭教師と試験監督と採点請負で応募した。
そういえば、採用先の周辺には、良心的なスーパーが多く、物価が安い地域だ。甘夏を五個で三百円、白胡麻一袋、擂鉢を半額で、購入した。また、復路に通った商店街で、酒粕を半額で買った。商店街には、いつもの戸建営業がいて、営業成績になるからということで、時間があったので内覧に行った。私は住宅に関心があって、間取り図が好きだ。何回か行っているが、買いませんよ、と断った上でもお喋りしてくれる。
帰路、以前近所の駅前で、夜分に物乞いしていた夫妻が、二つ隣の駅からバス二駅の外食屋に座っていた。まだ住む場所がないようだ。女性は安物の鞄を広げていたが、所持品が増えていた。男性が飲み物を買って渡していたが、肌艶がめっぽう良くなっていた。あれから二人で人生を話して過ごしたのだろう。誰もが成長することを学んだ。私もまた、回復しつつあるし、成長もしている。後で実感するのだろう。